2022年12月25日礼拝会
説教概要
この方こそキリスト
内川寿造牧師
ルカの福音書 2章1節~11節
クリスマスの夜、羊飼いたちに伝えられた主の使いのメッセージは、「素晴らしい喜び」「大きな喜び」であった。福音である。その中身は「きょうダビデの町で、あなたがたのために、救い主がお生まれになりました。この方こそ主キリストです。」
ルカは、イエス・キリストのご降誕の意義を、当時のローマ皇帝アウグストの権力支配と対比して記している。現代のような民主国家と違って、専制国家では皇帝の権力は絶対である。それに背くことは死を意味する。
そのような皇帝の権力誇示の一例が、14年毎に行われた人口調査であった。全世界の人間が、それぞれの生まれ故郷に帰って登録を済ませなければならない。平穏な日常生活や仕事を置いて、遠く旅する人にとっては、大変な時間とと労力とお金を費やさねばならない。
しかも、このような人口調査の目的は、住民の利益のためではなく、課税と兵役の基礎資料とするためであった。住民には二重三重の犠牲を強いられたのである。
自分の人生が、他者の意志によって動かされる悲哀と屈辱を味わうと、いつしか無力感と諦めに慣らされてしまう。しかし、ルカは、そのような皇帝支配の下で、ひとりのみどりごが誕生したことによって、全く新しい世界が展開していることを宣言している。
「この方こそ主キリストです。」皇帝ではなく、神こそ真の主である。
私たちの人生や世界の歴史は、特定の人間の意志で左右されない。神に導かれている。目に見えるものの背後に、見えない神の御手が働き、神の御意志が支配している。
しかも、この神の支配は、私達の罪をゆるし、救いを実現し、神の国を打ち立てることを目的としている。それゆえ、イエスこそ主であるとの宣言は「この民全体のための素晴らしい喜びの知らせ」すなわち福音なのである。
この福音を聞いた羊飼いたちは、すぐに救い主に会いに行き、その感動を人々に知らせた。一方、マリヤは思いを巡らせ祈っていた。
クリスマスが自分にもたらした恵みを感謝し、その喜びを一人でも多くの人々と分かち合いたいものである。